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日米における支払報告フォームの比較:支払調書とForm 1099

日米における支払報告フォームの比較:支払調書とForm 1099

 

師走の候、今年も最終月に入った。日系企業の多くはこの時期に顧客挨拶や決算作業で忙しくなる。企業の経理部は、新年に向けての税務当局への支払報告準備を行う時期でもある。その工程において、支払調書または米国のForm 1099の作成プロセルが必ず含まれている。本稿では、良く類似とされる日米の支払報告フォーム、支払調書とForm 1099を比較しながら、ポイントを押さえる。

 

1. 支払調書

 

支払調書とは、日本における法定調書のひとつである。企業が、従業員以外の個人や法人に対して支払うもの、例えば弁護士や税理士などスペシャリストへの報酬や講演料、不動産へのレント支払い、不動産の譲受対価、不動産などの売買・貸付の手数料などを、企業が一年間にどれだけ支払い、いくら源泉徴収したのかを記載、税務署に報告する書類である。基本4つの支払証書があるが、一番多く作成されるのは「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」である。これは年間を通じて同一者へ支払金額が5万円超の場合に作成が必要となる。逆に言えば同一者に対して支払金額が5万円以下の場合、作成は不要となる。したがって、企業では利用した弁護士や税理士、司法書士への報酬、フリーランスへの報酬については、年間5万円を超えるかどうかを個別的にチェック、支払調書を作成すべきか判断する。対象期間は1月1日から12月31日までであり、その確定金額を原則翌年の1月31日までに税務署に提出する。

 

2. Form 1099

 

支払調書に匹敵するのが米国Form 1099である。Form 1099は、米国企業が、年間を通じた個人事業主への支払金額とその内容分類を、IRSと支払先へ報告する報告書類である。個人事業主とは、Individual/Sole proprietor or single-member LLCのことであり、支払先により提出されるForm W-9を見ればそれに該当するかどうかを確認できる(弁護士は個人・法人に関わらずForm 1099を発行)。さらに米国Form 1099は細かく分類されている。現時点では計22フォームも存在する。その中で一般的な利用されているForm 1099 フォームは以下の通りである。

 

【Form 1099主要フォーム】

 

Form 1099-MISC (Miscellaneous Information)

・オフィスのレント、賞金及び商品、使用料(注意)支払い

Form 1099-NEC (Nonemployee Compensation)

・弁護士や会計士など個人事業主へのサービス支払い

Form 1099-DIV (Dividends and Distributions)

・配当金やその他分配

Form 1099-INT(Interest Income

・利息収入

Form 1099-R(Distributions from Pensions, Annuities, Retirement

・終身年金、退職金制度、個人年金口座(IRA)

 

原則として、年間を通じて同一者へ支払金額が$600<以上>の場合は作成が必要となる(注)。逆に言えば、同一者に対して、支払金額が$600<未満>の場合作成は不要となる。対象期間は1月1日から12月31日までとなる。ただし、提出期日は、フォームによって違ってくる。Form 1099‐NECは翌年の1月31日、Form 1099-MISCについては2つあり、紙ベースの場合翌年2月28日(paper 1099-MISC)、e-fileベースの場合翌年3月31日(e-file 1099-MISC)となる。

 

(注)使用料(ロイヤルティ)支払いは年間$10以上でForm 1099-MISCを発行。銀行や証券会社からの利息支払いは年間$10以上でForm 1099-INTを発行。銀行やそのほか金融機関からの支払配当は年間$10以上でForm 1099-DIVを発行。終身年金やIRA等から年間$10以上支払った場合はForm 1099-Rを発行。

 

3. 知っておきたい留意点

 

日本の支払調書は提出期限に間に合わなくともペナルティは課されない。一方米国Form 1099は期日までに提出されていない場合ペナルティを課せられる可能性がある。またTIN(Tax ID Number)や記載情報に誤りがある場合もペナルティを課されると指摘されている。従来、米国Form 1099のメインは1099-MISCだったが、2020 年度から、1099-MISCのNonemployee Compensation部分が1099-NECの区分に移った。よって現在ではNonemployee Compensation支払いは、Form 1099-NEC上に分類されている。

 

4. まとめ

 

支払調書とForm 1099は概念的には同じように見える。税務当局側(税務署、IRS)による課税客体の把握が、目的である。ただし米国Form 1099の方が、1099-MISCと1099-NECに区分されているように、より細かく、さらにそれぞれの提出期限が違う。米国Form 1099の方がより厳密に運用されているような印象を受ける。これらを米国進出日系企業は注意すべきであろう。

 

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