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最近の会計基準の動向-収益認識基準及び会計簡略化基準 2017/07/04

会計税務情報 2017年7月号
永野森田米国公認会計士事務所

最近の会計基準の動向-収益認識基準及び会計簡略化基準

 

しばらく会計関係のテーマがなかったので今月号では、最近の会計基準の動きについて触れたい。最近は、会計基準改訂の動きが活発で、会計基準改定書(Accounting Standards Update-ASU)が2014年18件、2015年17件、2016年20件、2017年10件(5月まで)と頻繁に出されている。デリバティブや年金に関連するものなど特殊分野のものも多いが、一般の企業に影響がありそうな収益認識基準と会計の簡略化に関するものについて主に説明する。

 

 

1.  収益認識基準に関する動き

最近の会計基準の改定の中では、やはり収益の認識基準が、会計の根幹に関わるテーマを扱っているだけに影響が大きい。収益の認識基準自体は遡ること3年前の2014年に、ASU 2014-09 “Revenue from Contracts with Customer” 「顧客との契約から生じる収益」として公表されている。公表時に本ニュースレター2014年9月号10月号でも解説しているので概要についてはそれを参照されたい。その後 、この収益の認識基準に関しては以下のような変更ないし追加の補足的改定が行われている。


ASU 2015-14 “Deferral of the Effective Date” (2015年8月)新収益認識基準がかなり複雑で対応にもう少し時間がほしいという各方面の要請を受けて適用時期を1年繰り延べたものである。この結果、新しい収益認識基準ASU 2014-09の適用時期 は、以下のとおりとなっている。公開企業に関しては、2017年12月15日より後に開始する会計年度より適用され、その年度の期中期間に関しても適用される。非公開会社に関しては、 2018年12月15日より後に開始する会計年度より適用され、期中期間については、2019年12月15日より後に始まる会計年度について適用される。なお、早期適用も認められている。


ASU 2016-08 “ASU Principal versus Agent Considerations” (2016年3月)このupdateは、収益取引に関して企業が本人(principal)であるか代理人(agent)であるかの判断に関するものである。この判断は、収益をgrossで認識するのか、netで認識するのかという点に関連する。この区別は、最終利益には影響を与えないが、税法上の企業規模の判定や移転価格スタディの分析結果等に影響を与える可能性があり思いの外重要である。2014年のAUS 2014-09でも既にこの点については、新収益基準の中核となる概念controlを使って説明されていた。つまり、財貨やサービスが顧客に移転される前に、その企業がその財貨やサービスをコントロールしていた場合は、本人(Principal)であるとしていた。しかし、ASU 2016-08では具体的にどのような場合についてコントロールしていたのか否かの判断についての指標を改訂してより統一的な会計処理を図るものになっている。

 

 

2. 会計の簡略化に関する動き

2014年5月よりFASB(米国会計基準機構)は会計基準の簡素化(Simplification Initiative) を継続的に進めており、不必要なな複雑さを排除し、US GAAPを国際的な会計慣行に沿ったものにする改訂が続いている。その概要に関しては、本ニュースレター2015年9月号で一度触れているが、重要なものについての追加説明とともにその後のupdateを以下に紹介したい。

  • (1) 棚卸資産の評価の簡素化(ASU 2015-11)

2015年9月号の時から規定自体に変更はないが棚卸資産に関する重要な変更であり、再度触れておきたい。棚卸資産の評価について、US GAAPは従来LCM(Lower of Cost or Market)を採用し、Market Priceとは原則Replacement Cost(再調達価額)であるとしてきた。しかし、単純に購買市場のReplacement Costのみを考慮するのではなく、販売市場における売価も一定の場合考慮し(所謂Floor and Ceiling)、Market Priceを決めていたため煩雑なものになっていた。この変更は、原価との比較対象を販売市場のみに着目しNRV(Net Realizable Value-正味実現可能価額)にするものである。NRVは販売価格マイナス売却経費で算出される。日本のGAAPやIFRSも以前からNRVを採用しており、この変更により US GAAPは、他の主要な会計基準と足並みを揃えたことになる。実務上は、4 つの金額(Cost, Replacement Cost, Floor, Ceiling)を比べる必要がなくなり、CostとNRVだけを比較すればいいことになったため期末の在庫評価の負担が軽減されることになる。なお、後入先出法(LIFO)及び売価還元法(Retail method)については、依然として従来のLCMが適応されることに留意が必要である。(公開企業、非公開企業とも2016年12月15日より後に開始する会計年度より適用。早期適用可)

  • (2) 繰延税金資産/負債の長短区分の廃止(ASU 2015-17)

前回2015年9月号で紹介したときは、公開草案の状態であったが、正式にASU 2015-17として発効した。繰延税金資産/負債については、従来は原則として会計と税務の一時差異を発生させた資産、負債の貸借対照表上の区分に基づいて長期、短期の区分をしていた。しかし、このような区分は、実際に一時差異が短期で解消するのか、長期で解消するのかといった解消時期を示すものでもなく有用性に欠けるという議論があった。また、解消予想時期を基礎として長短区分をしようにもその区分は容易ではないということで、繰延税金資産/負債に関しては、一律、長期(noncurrent)資産/負債として扱うことになった。FASBでは、解消時期に関する情報は注記に含めればいいという議論もあったようだが、注記に関する規定は今のところ変更になっていない。なお、IFRSも既に同様の規定を置いており、日本でもこれに沿った変更が検討されている。(公開企業に関しては2016年12月15日、非公開企業に関しては2017年12月15日より後に開始する会計年度より適用。早期適用可)

  • (3) クラウド・コンピューティングに関する新規定(ASU 2015-05)

前回触れていないもので影響が大きい改定にこのクラウド・コンピューティングに関する規定がある。最近は、従来のようにソフトウェア自体をCD等で入手し自身のPCやサーバーにインストールするのではなく、ソフトウェアをクラウドベースで使う事例が増加している。ASU 2015-07はそういったクラウドベースでソフトウェアを使う場合の会計処理について規定している。この基準では、クラウド・コンピューティングをソフトウェア・ライセンス付与を伴うものと伴わないものに分類し、ライセンスを伴うものについては、無形固定資産であるソフトウェアの取得として処理し、伴わないものについては、サービス契約として扱うことを求めている。ここで、ライセンス付与を伴うとは、以下の2つの条件を満たす場合をいう。

  • 企業は著しいペナルティーなしに、ソフトウェア自体を取り寄せる(take possession)する契約上の権利を有する。
  • 企業はソフトウェアを自身のハードウェア上で走らせることができるか、ソフトウェアベンダーとは関係がない第三者にホスティングしてもらう契約をすることができる。

上記の条件を共に満たさないときは、ライセンス付与がないサービス契約であると解され、クラウド・コンピューティング導入に伴う初期費用は無形固定資産の取得とは扱われない。ASU 2015-07はこの導入費用の扱いについては明確には示さず、他の現存の会計基準の条項を適用するべきであるとしており、実務上は一括費用化から一定の範囲内での資産化(前払費用等での処理)までかなりばらつきがあるようである。このためFASBは、今年の5月10日にサービス契約とされたクラウド・コンピューティング導入に伴う初期費用の取り扱いについてEITF(Emerging Issue Task Force)で検討することを決定した。(公開企業、非公開企業とも2015年12月15日より後に開始する会計年度より適用)

  • (4) 暖簾(Goodwill)の減損(ASU No. 2017-04)

事業や会社が買収される場合、取得される資産と負債の時価の差額(いわば純資産額)を上回る価額での取引が行われるのが一般的である。その場合の差額は暖簾(goodwill)とされ無形固定資産として扱われる。このGoodwillに関しては US GAAP上は原則償却は行われず、定期的に減損の判定が行われるにとどまる。IFRSでも同様の扱いをしているが、日本のGAAPでは、20年以内の適切な期間に定額償却することを要求しており重要な会計基準の差異となっている。US GAAP上での減損金額の算出方法であるが、旧来は以下のように2つのステップを踏んでいた。

  • Step 1 - 報告単位の公正価値と暖簾を含む帳簿価格とを比較する。
  • Step 2 - Step 1で帳簿価格が上回る場合には、報告単位の資産と負債の公正価値を把握した上で、それを報告単位の公正価値から差し引いて暖簾と見なされる金額(implied fair value of goodwill)を算出し、帳簿上の暖簾と暖簾と見なされる金額の差額を減損損失とする。

Step 2はこのように書くとわかりにくいが、詰まるところあたかも現時点で再度買収が行われた場合にどの程度の暖簾が発生するかを計算していることになる。しかし、このStep 2を実施するためには、報告単位を構成する資産と負債の公正価値を把握する必要があり非常に手間がかかる作業であった。今回の改訂は、このStep 2を廃止し、Step 1だけ実施して、報告単位全体の公正価値と報告単位の暖簾を含む帳簿価格の差額を減損額とすることになった。この結果goodwillの減損としては従来よりも不正確な数値が出てくる可能性があるが、FASBは減損が必要かどうかわかることが多くの利害関係者の関心事であり認容できるとしている。なお、非公開企業に関しては2014年1月に公表されたASU 2014-04において、goodwillを10年以内で定額法で償却する選択も認めているので留意が必要である。ASU 2017-04においては、公開企業に関してもgoodwillの償却を認める、または要求するか否か今後検討するとしておりその動向が注目される。(公開企業に関しては2020年12月15日、非公開企業に関しては2021年12月15日より後に開始する会計年度より適用。早期適用可)

 

他にも最近の会計基準改訂では、2016年7月号で紹介した新リース会計も大きな影響を及ぼすと考えられる。以上のように会計基準はめまぐるしく設定・変更されており、それが実務や決算に与える影響を事前に把握していくことが重要である。

 

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