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内部統制-業務上の不正 (Occupational Fraud) 2016/06/04

会計税務情報2016年6月号
永野森田米国公認会計士事務所


内部統制-業務上の不正 (Occupational Fraud)


財務諸表監査における内部統制に関しては、様々な事件を通してその重要性が認識され、日米では上場企業の監査に内部統制評価が組み込まれている(SOX、J-SOX)。米国監査基準書 (SAS: Statement on Auditing Standards) の中で、不正 (Fraud) にはFraudulent Financial ReportingとMisappropriation of Assetsが記されており、前者が不正な財務報告(いわゆる粉飾)、後者が資産の流用ということになる。2014年の全世界を対象とした調査結果によると、2013年の不正行為による損失は3兆7,000億ドルに及び、年々増加する傾向にある。業務上の不正行為による損失は、中央値 (Median) が14万5,000ドル、全体の22%は100万ドル以上もの被害になる。  これらの不正に対処する内部統制は、財務諸表監査が必要とされる企業のみが整備すればよいものではない。特に資産の流用は企業の規模に関わらず発生していることから、すべての企業で内部統制の整備が必要であるといえる。今回は、身近に起こりうる業務上の不正 (Occupational Fraud) について記したい。


1. 手元現金の盗難 (Cash Larceny)


手元現金は最も盗まれやすい会社の資産である。大手スーパーマーケット等では、全てのレジの上に監視カメラが設置されていることからも、この対策が重要であることは言うまでもない。最近では安価なコストで設置できるセキュリティカメラが存在するので、現金を扱うレジなどには必ず設置するようにしたい。また、現金の過不足は毎日確認し、常にモニターする必要がある。

レジ担当者 (Casher) が単独で売上の訂正や取り消しができないシステムも必須である。大手のスーパーマーケット等では、売上の訂正を行う必要がある場合、レジ担当者がマネージャーを呼び、そのマネージャーが鍵を持ってくる場面をよく見かける。レジ担当者が単独で簡単に売上の取り消しができる場合、レジ担当者自身のクレジットカードや銀行のカードに還付金が入るように手続きする手口が存在するからである。古いタイプのクレジットカードリーダーなどで多い手口である。この方法からは、不正による損失が現金過不足には反映されず、帳簿上からの発見には困難を伴う。


2. 小切手の改ざん (Check Tampering)


会社の小切手にアクセスできる者が、小切手の署名の偽造、裏書の偽造、宛先を改ざんすることで、直接現金を受け取る手口である。小切手の現物へのアクセスを制限する、小切手を扱う人と異なる人による銀行勘定調整 (Bank Reconciliation) を適時に行う、支払期限を過ぎている買掛金や未払費用に注意を払う、などを徹底させることで対策可能である。


3. 請求書 (Billing)


架空の取引先からの請求書を作成してその支払いを入手する手口、既存の取引先への二重払い、過剰払いの差額を入手する手口、既存の取引先から個人的な買い物をして商品の送付先を個人に変更する手口などがある。最近では、請求書のテンプレートなども簡単にウェブ経由で入手できることから、架空の請求書は誰でも簡単に作成できる。これらの防止には、注文書 (Purchase Order) 、受取確認書 (Receiving Report) 、請求書 (Invoice) といった支払いのための3点セット (Voucher Package) の確認の徹底と、未承認の取引先がないことを常にモニターすることが必要である。この不正行為には、支払小切手の送付先が私書箱 (P.O. Box) であることが多い。異なる取引先への支払いにもかかわらず、同一私書箱への支払送付記録がある場合、かなり不正の可能性が高いと言える。また、同一取引先への二重払いは常に監視するのが望ましい。小切手の支払履歴をエクセルなどに出力し、支払先住所で並べ替えたり、支払先ごとに並べ替えたりする作業をすることで、比較的簡単に不正行為を発見できる可能性がある。


4. 立替経費精算 (Expense Reimbursements)


レシートの偽造や個人的経費の精算などの手口で、過大に現金を入手する手口である。例えば、旅費精算で、キャンセル可能な高い航空券をインターネット上で購入し、購入記録を入手し、実際にはキャンセルして安い航空券を使うことで、差額を入手するケースもある。立替経費精算書にはレシートの添付を義務付け、不正利用がないかどうか、責任のある立場の者が支払い前に確認、承認する手続きが必須である。


5. 給与(Payroll)


よく知られる給与における不正行為には、存在しない従業員 (Ghost Employees) を使い、架空の給与の支払いを入手する手口がある。既に退職した従業員や、存在しない従業員が給与計算に含まれていないかを、給料日ごとに確認する必要がある。勤務時間や時間給の水増しなども同様である。給与計算を社内で行い、所得税の源泉徴収額を改ざんするといった複雑な事例もある。自社で使用している給与計算ソフトウェアを通して、所得税源泉徴収額の水増し修正を行い、源泉徴収票 (Form W-2) に所得税の源泉徴収額が過大計上されるようにする。それが個人の確定申告を通して税務当局に報告されることで、税務当局からの還付金を過大に受け取るといった手口である。後日、税務当局から所得税の源泉徴収税の過少納付を指摘され、その水増し額と支払遅延ペナルティを請求されるのは雇用主となる。こういった不正を防ぐには、給与データの変更が簡単にできない給与計算ソフトウェアを導入するか、外部会社に給与計算業務を委託することが望ましい。

以上のように、業務上の不正はどのビジネスにおいても日常的に発生し得るものである。これらの点を想定した内部統制の構築が全ての企業で求められる所以である。

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“2014 Report to the Nations on Occupational Fraud and Abuse,” Association of Certified Fraud Examiners, Copyright 2014 by the Association of Certified Fraud Examiners, Inc. http://www.acfe.com/rttn/docs/2014-report-to-nations.pdf

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