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米国不動産投資 (その2) 2016/05/04

会計税務情報2016年5月号
永野森田会計士事務所

米国不動産投資 (その2)


日本の命運を左右すると言っても過言でない環太平洋パートナシップ協定 (Trans-Pacific Partnership trade pact―TPP協定) 実現までには幾つかハードルがあるが、もし実現すれば、国境のない自由貿易・投資を合言葉に、対米投資は一気に加速する可能性を秘めている。中でも不動産投資は分かり易く、魅力的だ。アメリカは日本の20倍もある国だから、広い土地を低価格で自分のものに出来るという日本では果たせない夢を実現させてくれるに相違ない。然し、30年前、日本のバブル景気の頃経験した手痛い過ちを繰り返したくはない。この当りで米国投資の基本をおさらいしておくのは、意味の無いことではない。



前月号では、日本人個人が直接アメリカの不動産投資をする形態を考察したところ、持主が他界した場合にアメリカの遺産税の対象になることが分かった。遺産税は本人の遺産に課される税金であるが故、遺産管財人の選定や場合によっては裁判所による判決取得手続きが必要となる。こうした面倒を避ける為には、日本法人を介した間接保有の形態が有効だ。


1. 日本法人を介した間接投資

日本人が100%保有する株式会社を日本に設立し、その会社がアメリカの不動産を保有する形態だ。米国遺産税並びに贈与税では非居住外国人の保有する株式は課税されないので、実質的オーナーは米国遺産税並びに贈与税リスクから完全に保護される。(Section 2101, 2104, 2106, 2501, 2511) 同時に、個人保有で問題となった所有者名公表の問題も解決するといった利点がある。

ところで、不動産投資は必ずと言って良いくらい買い替えを伴うが、手続的に最もシンプルな方法は、不動産保有会社の株売買であることは疑いない。株券の裏書だけで取引が完結するからだ。然しながら、外国法人株をアメリカで売買することは実務的に現実的ではない。では、投資不動産そのものを売買したらどうだろうか。その方が一般的であるし、買い手としては資産購入の方が安全だと思うに違いない。処が、日本人の個人直接保有もそうだが、外国法人保有の不動産売却に際しては、売値の15%を天引きしなければならないことになっている。所謂、FIRPTA (Foreign Investment Real Property Tax Act) 税制である。

キャピタルゲインの有無に無関係の源泉税であり、エスクロー決済前後に面倒な減免申請をするか、一年が終った処で確定申告をしなければ一度天引きにあった税は戻ってこない。出来れば避けて通りたいものである。では、このFIRPTA税制とはどんなものなのか。避ける方法はあるのだろうか。


2.FIRPTA税制とは何か

日本がバブル景気に酔って、アメリカ不動産を片っ端から買い漁った時代の置き土産といっても良い1980年に発効した税法である。非居住外国人 (法人を含む) は、購入した不動産の処分 (Disposition) 時点で、原則として処分価値の15% (例外的に10%) を買い手が源泉し、これを一度IRSに納付することになる。(Reg. §1.1445-1)

この税法の特徴は、まず、不動産の処分に拘わるその他の税法に影響を与えることだ。例えば、非課税交換の代名詞ともいえる1031 Exchangeにも条件を課す為、非居住外国人が保有不動産の非課税交換を希望する場合は、事前に源泉免除申請をするのが得策といえる。次に、米国不動産処分は、米国事業 (Effectively Connected US Business) を構成すると規定したことで、必ず確定申告をしなければならない結果を生む。最後に、現地法人を作って、これで包み込んでも透視するという特徴を持つ。米国不動産保有会社 (US Real Property Holding Company-USRPHC) という概念の誕生だ。

USRPHCとは、全保有事業資産に占める米国不動産の比率が50%以上の会社を指すと考えたら良い。しかも、判定期間は5年にも及ぶ。即ち、一度その判定を受けると、5年間はUSRPHCのままなのだ。そして、 USRPHC認定基準を超える会社の株を保有する非居住外国人 (法人を含む) は、源泉税に関する限り、その株取引については直接保有と同じ結果になることに留意しなければならない。例えば、そのような会社の株を譲渡し100万ドルの対価を得たとすると、15万ドルが源泉徴収されることになる。

以上により、日本法人が米国不動産保有を目的とする子会社を作っても、FIRPTA税制の網からは逃れることはできないことを認識しておかなければならない。


3. バブルの教訓

1980年代に体験したアメリカ投資は広範囲に及んだ。集合住宅、オフィスビル、ショッピングセンター、ゴルフ場、スキー場と、その共通項は不動産だ。中には、遺跡指定を受けている建築物を掴まされた事例もある。これだけで、数十億円が消えた。

残念乍ら、多くの投資が失敗に終わり、巨額の損失を築く結果となったが、投資失敗への備えは十分とは言えなかった。投資元本までも道連れにしてしまったのだ。当時はまだ土一升、金一升の考えが支配的だあったことが災いしたに違いなく、アメリカの不動産も使用価値以前の段階で絶対的換金性があると誤解していたのだ。かっての巨額損失の経験で学んだことが、アメリカの不動産の価値はストックでなくフローだという初歩的な知識だったとしたら、余りにも高い授業料だったことになる。



(注釈) 本稿で言及している税法は連邦税のみです。

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