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米国不動産投資(その1) 2016/04/04

会計税務情報2016年4月号
永野森田会計士事務所


米国不動産投資(その1)


日本の命運を左右すると言っても過言でない環太平洋パートナシップ協定(Trans-Pacific Partnership trade pact―TPP協定)が、愈々現実味を帯びてきた。国境のない自由貿易、投資を合言葉に、対米投資は一気に加速する可能性を秘めている。不動産投資は分かり易く、アメリカは日本の20倍もある国だから、広い土地を低価格で自分のものに出来るという、日本では果たせない夢を実現させてくれるに相違ない。然し、30年前、日本のバブル景気の頃経験した手痛い過ちを繰り返したくはない。この当りで米国投資のベイシックをおさらいしておこう。


米国への不動産投資方法には幾つかある。これを列挙してみると、非居住外国人としての直接投資、日本法人を介しての間接投資、非居住外国人として米国内に設立した法人を介しての間接投資、日本法人が米国に設立した法人を介しての複数階層投資、非居住外国人又は、外国法人として米国内に組成したパートナーシップを介した投資、そしてトラスト利用した投資などとなる。その中で、まずは、個人の直接投資をみてみよう。




1.個人の直接保有のリスク

シンプルで費用も安くつく方法で、投資形態としては最もポピュラーだ。その代わり、不動産の保有者名が実名で公表されるなど個人情報を秘匿できないため、不動産保有に伴うリスクをもろに背負い込むことになる。よく言われることであるが、持っている家の前で転んで怪我をした通行人は、怪我の治療費を請求してくるに違いない。屋根が傷んでいた為穴が空き、転落して重症を負った泥棒がその家の持主を訴えた事例がロースクールの教科書にも載っているようである。こうしたリスクの殆どは保険でカバーできるが、税金については誰も補償してくれない。



2.所得税のリスク

・事業所得を選択する方がベターなことが多い


税務の世界には、大きく分けて事業収入(Effectively Connected with US Trade or Business-ECI米国ビジネス)と非事業収入(Not-effectively Connected-Non ECI)があり、このいずれに属するかによって扱いが異なってくる。米国ビジネスは、そのグロス収入から経費を控除した後のネット所得が課税標準となるが、非事業収入の方は、グロス収入の30%の源泉徴収だ。日本に居ながらにして不動産投資をする場合、その殆どは賃貸目的ということになるが、いずれに属するのだろうか。答えは、どちらもありうるということになる。実は、選択性なのだ。従って、選択を怠るとNon-ECI判定になり、ネットでは損失にも拘わらず、グロス収入課税の憂き目をみるリスクがあるので注意が必要だ。例えば、トリプルネットリース(固定資産税、保険、補修費用の全てを賃借人が負担するリース形態)ではリース契約時を除き、持ち主は管理会社に任せきりになり、ECIとはみなされない可能性がある。(RevRul73-522)然しながら、米国不動産賃貸は、殆どの場合、米国ビジネスを選択した方が有利であり、投資家はそれを当然の事と考える傾向にある。その為、グロス課税の存在すら気付かない恐れがでてくる。確定申告の初年度に於いて必ず米国ビジネスであることを宣言し、諸々の経費算入が可能な状態にしておくことが肝要である。(Reg. 1.871-10)


・支払い利息は全額控除できないかもしれない


上記により、賃貸収入に対する税対策としては、米国ビジネスとしてネット課税方式を採用した方が良いことが分かった。処で、不動産投資をする場合、特に大きな役割を果たすのがファイナンスである。近年の借り入れ利率は極めて低い為、僅かな自己資金でも不動産投資が実現するようである。かつて日本でバブル投資が横行し、それが原因で金融再編成の原因ともなった時代には、自己資金ゼロ融資が行われた。そして、リーマンショックを引き起こしたのも同じ原因であった。そうした事態への歯止めとして、全額ファイナンスに一定の制限があることについては承知しておかなければならない。80%リミットと言われるもので、借入金に対する支払い利息は、保有不動産の80%を限度とし、それを超える借り入れ金相当の支払い利息は経費控除不算入なのだ。(Reg. 1.861-9T(d)(2)) 含み資産を利用したファイナンスの際のポイントとなる。



3.遺産税(Estate Tax)の考察

米国不動産は過去着実に値上がりしてきたことから、ついつい長期保有となり売却の機会を失ったまま持主が他界する事例が目立つようになってきた。生憎こうした不動産は米国遺産税課税対象である(IRC2101(b))上、様々な面で米国市民に比べて不利な扱いを受ける仕組みになっている。米国市民に用意されている無制限夫婦間相続制度は使えないし、
一般の遺産税基礎控除についても、米国市民には500万ドル超が許容されるのに対し非居住外国人のそれは僅かに6万ドルでしかない。ここで、相続税という言葉の代わりに「遺産税」という言葉を使っていることに気付いていただいているだろうか?アメリカでは遺産を残した故人の財産に対する課税であることから、「遺産税」という言葉を用いている。因みに日本では、遺産を貰った相続人が相続税の納税義務者となっていることから、「相続税」と表現している。即ち、日米では、遺産を巡る納税義務者が逆になる。そして、このことが、遺産税対策を講じる際の重要なポイントとなってくる。


(次月号に続く)

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