永野・森田米国公認会計士事務所では、日米会計、経理、簿記、監査、税務、など日系企業の
米国進出ならびに米国での事業拡大に貢献してきた米国公認会計士事務所です。

JAPANESE / ENGLISH

採用情報 / お問合せ

トップページ > ニュース一覧

Repair Regulations - 資産取得費用の資産化と損金算入 2016/03/04

会計税務情報 2016年3月号
永野森田会計士事務所

Repair Regulations - 資産取得費用の資産化と損金算入


2014年に発表されたRepair Regulationsの最終規則は、従来からの課題であった有形資産取得費用に関して、税務上で資産化と損金算入のどちらを選択すべきか方針をより明確にした。これにより、小規模納税者のコンプライアンス負担が大きく軽減された。今回は、同Regulationsにて言及されている内国歳入法162、168、263、263A条のうち、263条に関わるルール(“De Minimis Safe Harborルール”、“Major Component ルール”)の一部を紹介すると共に、それぞれのルールの意義についても検討する。また、2015年2月に発表された小規模事業者に対するForm 3115提出免除措置の影響についても考える。


1.De Minimis Safe Harborルール

2015年11月、IRSはNotice 2015-82を発表し、財務諸表監査を受けない納税者がDe Minimis Safe Harborルール(以後“de minimis ルール”)を適用した場合、税務上損金算入できる資産取得費用の上限を、一資産当たり500ドルから2,500ドルに引き上げた。なお、財務諸表監査を受ける納税者にのみ適用される5,000ドルの上限には変更はない。

このde minimis ルールの適用を受けるには、納税者が会計上一律に一定額以下の取得資産を費用化する会計方針を採用している必要がある。そして、会計上の費用処理を前提として、一資産当たりの取得費用が2,500ドル(財務諸表監査を受けた場合は、5,000ドル)以下の場合は、当該資産の取得費用を税務上でも損金算入することになる。納税者が、5,000ドル又は2,500ドルと異なる会計上の費用化方針を採用することは可能であるが、税務上の損金算入額は原則として会計上の費用額かde minimis ルールの上限額かのどちらか小さい方になる。会計上での処理を前提にしているため、財務諸表監査を受ける会社においては、会計年度の期首において上述の会計方針が文書化されている必要がある。財務諸表監査を受けない納税者の場合文書化の必要は無いが、年間を通じ一貫した費用化方針に基づいた会計処理を行うことが求められる。


de minimisルールを選択する場合、財務省規則1.263(a)-1(f)(5)の規定に則り、個人もしくは法人申告書に特別のステートメントを添付する。選択のためには申告書を提出期限(延長申請した場合は、延長後の提出期限)までに提出する必要がある。提出期限以降に提出された申告書においては、de minimisルールの選択は出来ない。また、延長後の提出期限以降に修正申告書を提出しても、期限までに提出した申告書において選択していない場合は同ルールの選択は出来ない。上述の500ドルから2,500ドルへの上限の引き上げは、2016年度(=2016年1月1日以降に始まる会計年度)より適用されるが、2015年度においても一貫してde minimisルールの条件に適合した会計処理を行っていたケースにおいては、2015年度の申告より適用しても、IRSは問題視しない旨発表している(IRS Notice 2015-82)。なお、de minimisルールついては、その適用を年度毎に選択可能である。

de minimisルールは、内国歳入法 179条の一括償却ルールに類似するが、(1)米国外での資産取得にも適用される、(2)建物に関する設備への投資にも広く適用される、(3)赤字の納税者や設備投資総額が一定水準を超える納税者も無制限に利用可能である、(4)同ルールに関し、カリフォルニア州は完全に連邦に従うと発表しているため(注1)、179条を利用した場合とは対照的に、Federal-CA adjustmentの必要性がない、(5)同ルールによって損金算入された資産取得費用は、原則として会計上および税務上の償却資産台帳に登場しないため、償却資産に関わるデータ管理が簡素化され、償却スケジュールの差異に起因する会計‐税務(連邦税務および各州税務)のreconciliationの必要性も軽減するなどの理由により、179条よりも利用範囲と簡便性が高いルールと言える。

 

2.Major Componentルール

建物に関する設備投資(増築、改築等)について、かかった費用を税務上損金算入しない(もしくは出来ない)場合、一部の15年で償却するケースを除き、資産化した費用を27.5年(居住用賃貸物件の場合)もしくは39年(その他の物件の場合)にて償却するのが通常である。増改築を施した建物が既に使用開始後何年も経っている物件であっても、新たに資産化した費用については、当該建物と同一の期間(=27.5年 または39年)でもって税務上減価償却していく。増改築の際に建物の一部が除却されても(例:屋根の葺き替え時に取り替えられた古い屋根等)、通常、財務省規則1.168(i)-8(d)に則った選択をしない限り、税務上除却を認識しない。そのため、屋根の葺き替えの場合ならば、取り替えられた古い屋根が、(建物の一部として)継続して減価償却されていく。新しく取り付けられた屋根もそれと並行して減価償却される。
建物の税務を複雑にしているのは、増改築等の設備投資に限らず、建物のメンテナンスに伴う費用ともとれるものについても資産化する必要が生じることである。2014年1月に発表された、財務省規則1.263(a)-3において、興味深い例が紹介されている(以下財務省規則1.263(a)-3(k)(7) より一部要約)。

例1)小売業を営む納税者“S”は、自ら所有する3階建て小売用店舗ビル内に所在する2つの洗面所(これら以外に同ビル内には、洗面所は無い)に設置された全ての洗面台、トイレ(便器)につき、よりモダンなスタイルのものに取り替えた。外見を除き、品質や機能の点において、新しく取り付けられたものと、取り替えられたものの間に、大きな違いはなかった。

(例2)(例1)と状況は同じ。但し、ビル内の2つの洗面所には、計20台の洗面台があったと仮定する。更に、その内の8台についてのみ取り替えられた(残りの洗面台、及びトイレについては取り替えられなかった)と仮定する。

上記例中の洗面台、トイレは、Sが所有するビル内の水道関連設備の一要素(コンポーネント)として、それぞれ重要な機能を有している(洗面台、トイレに加え、重要な機能を有する水道関連コンポーネントの例としては、パイプ、排水設備、バルブ(弁)、浴槽、汚水回収設備等が挙げられる。水道関連設備に限らず、償却資産を構成するコンポーネントが重要且つ固有の機能を施している場合、財務省規則はメジャー・コンポーネントと呼ぶ)。メジャー・コンポーネントが取り替えられる際には、交換費用を税務上資産化するか否かの判断基準の一つとして、当該メジャー・コンポーネントに占める交換対象部分の割合に着目し、量、質の両面からその重要度を検討する(財務省規則1.263(a)-3(k)(6)(i)(A))。上述の(例1)の場合、それぞれのメジャー・コンポーネント全体(=店舗ビル中の全ての洗面台、トイレ)が交換された。IRSは、この様な場合、交換費用は資産化されると結論づけている。(例2)の場合、20台の洗面台のうち、8台が交換されたが、IRSは、交換費用を資産化する必要なしと結んでいる。財務省規則1.263(a)-3(k)(6)は、メジャー・コンポーネントの何パーセントに当たる部分が交換されたら資産化が必要となるか明確に規定していないが、「20台の洗面台中8台につき、機能、品質の点で同等のものと取り替える場合には資産化の必要なし」とする解説は、一定のガイドラインを提供していると考えられる。なお、上記(例1)において、新しく取り付けられた洗面台、トイレ一台一台につき、取得費(据付、デリバリーに掛かった費用を含む)がde minimisルールが定める金額以内である場合には、財務省規則1.263(a)-3(k)(6)(i)(A)に基づく検討結果にかかわらず、税務上損金算入が可能である(注2)。



3.小規模事業者に対するForm 3115免除措置の影響

de minimsルールは、2014年1月1日以降に取得した資産にのみ適用されるが、上述の財務省規則1.263(a)-3(k)(6)(i)(A)等、Repair Regulations中のルールの多くは、2014年以前の資産の取得、除却にも適用される。IRSは同Regulationsへのコンプライアンスのため、必要ならば、過年度における資産の取得、除却につき、税務上の扱いを変更するよう納税者に求めている。例えば、上述の(例2)において8台の洗面台の交換費用を資産化し39年の期間でもって減価償却した場合で、財務省規則1.263(a)-3(k)(6)(i)(A)に則って検討した結果、「本来ならば、取得時に損金算入すべきであった」との結論に至った場合、同財務省規則を根拠とし、税務上の処理方法を変更する。変更の際には、Form 3115を変更年度の申告書に添付すると共に、同フォームのコピーを所定のIRSアドレスに郵送する。この場合、変更年度期首時点における洗面台の未償却ベーシス全額を、変更年度申告書にて、“IRC Sec 481(a) Adjustment”という名目にて損金算入する。このAdjustmentは、M-1調整項目として扱う。IRSは、2015年2月のRevenue Procedure 2015-20にて、資産、もしくは過去3年間の平均売上のいずれかが10百万ドル以下の個人、法人事業者に対しては、Repair Regulationsが過年度に遡って適用されないよう選択出来ることとした。同Revenue Procedureが発表された際、納税者のコンプライアンス負担が軽減されたと評価する向きもあったが、上述の(例2)の様な状況にある納税者においては、むしろ過年度の取得資産に対してもRepair Regulationsを適用した方が有利であることを理解すべきである。


(注1) FTB Tax News 2015年3月号https://www.ftb.ca.gov/Archive/professionals/taxnews/2015/March/Index.shtml にて閲覧可能。
(注2) 建物に関する設備の取替え費用へのDe Minimis Safe Harborルールの適用について、Notice 2015-82の執筆者、IRS Associate Chief Counsel(Income Tax and Accounting) とも意見交換をしたが、財務省規則1.263(a)-1(f)(3)(v)に抵触しない限り損金算入可能とのアドバイスを得た。
【連絡先】Los Angeles Office河村(213-347-1129)

< 2015年米国個人税務アップデート | 米国不動産投資(その1) >