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TPP協定は日米貿易/投資にとって是か非か 2016/01/04

会計税務情報2016年新年号

永野森田会計士事務所

 

TPP協定は日米貿易/投資にとって是か非か

 

日本の命運を左右すると言っても過言でない環太平洋パートナシップ協定(Trans-Pacific Partnership trade pact―TPP協定)が、昨年10月のアトランタで行われた閣僚会議で大筋合意した。まだ政府間交渉レベルの段階でもあり、しかもアメリカ議会には根強い反対論もあるようなので、最終的な着地点への保証はない。然しながら、同12月の日本記者クラブでのケネデイ大使の肯定的なスピーチから推して、議会で批准されるのは間違いなさそうである。日本側もその政治情勢から推して、同様である。本稿では、協定発効を前提として、TPP協定は日米貿易/投資にとって是か非かを論じてみたい。

 

1、TPP協定とは何か

 

2006年にニュージーランド、シンガポール、チリ及びブルネイの4カ国間で開始された経済連携協定に、その後アメリカ、日本、カナダ、オーストラリア、ペルー、メキシコ、マレーシャ、ベトナムの8カ国が加わった高い水準の貿易と投資の自由化を目指す協定である。その規模は、約八億人を巻き込み、世界全体のGDPの40%を占めるといわれている。間違いなくグローバルな貿易と投資のあり方の基本的枠組みを提供するものと考えられる。中でも、世界最大の経済規模を誇るアメリカと同三位の日本が同一域内で自由貿易を行う意味は格別だ。この二カ国だけで、TPP全体に占める経済規模は70%+(日本15%+、アメリカ55%+)に達する。TPPでは日本とアメリカは突出した存在なのである。

 

2、TPP協定の概要

 

内閣官房TPP対策本部が2015年11月に公表した概要によれば、原則として物品市場へのアクセスに関しては、内国民待遇、輸出入の制限、新たな関税の禁止及び関税の漸進的撤廃、削減が盛り込まれている。

 

非関税分野に於いては、アメリカとの間でまだ投資関連協定が締結されていなかったため、日本の投資家保護のための枠組みが初めて提供されることになる。その骨格を成すのは、内国民待遇、最恵国待遇、収容および補償である。国境を越えるサービスについては、内国民待遇、最恵国待遇、市場アクセス等を前提とし、その義務が課されない分野はネガテブリスト方式を採用している。因みに、公認会計士、税理士に関しては、自由職業サービス付属書の概要で規定されており、何れも日本国の法令による公認会計士、税理士としての資格を有しなければならないとされ、弁護士分野にある外国弁護士に匹敵する言及は見当たらない。

 

3、TPP協定は日米貿易/投資にとって是か非か

 

先に日米は突出した存在であるとのべたが、両国間の近年の貿易、投資実績はどうだろう。

日本貿易振興機構(JETRO)が公表している最新の統計によれば、日本の対米投資残高は、2012年末現在で、約37兆円に達している。これは、イギリスの5,600億ドルに次ぐ大きさであり、対米世界総投資額の12%となる。これに対し、アメリカの対日投資額は、同時期で約16兆円、比率的にはアメリカの対外投資額全体の3%に止まっている。因みに、最大相手国は、オランダとイギリスで、それぞれ15%及び13%を占める。

一方、2013年の輸出入統計によれば、アメリカの対日輸入は約17兆円、対日輸出は約8兆円とアンバランスで、しかも、アメリカの貿易全体に占める比率は、輸入6%に対し、輸出は3%でしかない。

 

では、このTPP協定は、どのような効果をもたらすだろうか。それを予測するに足りる事例がある。北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement-NAFTA)だ。NAFTAは1989年に発効したアメリカーカナダ間の自由貿易協定が拡大し、1994年にメキシコが加わることで誕生した3国間の自由貿易協定である。この協定では、域内の貿易に於ける全品目の関税を15年間でほぼ全廃することにしている。更に、金融、投資の自由化や知的財産の保護も目的としているばかりか、環境問題と労働者保護問題も規定している点で類似性が認められる。

 

このNAFTA結成以来、域内の貿易は着実に拡大していると言われており、今や米国の最大の貿易相手はNAFTA加盟国なのだ。このNAFTA加盟国であるカナダとメキシコへの輸出比率は、アメリカ総輸出の33%+を占め、輸入に於いても27%に上っていて、日本の6%と3%を大きく引き離している(2013年の実績)。更に注目に値するのは、専門家といわれる分野の人材の交流促進である。少し古い資料ながら、2006年にNAFTAのプログラムで短期的にカナダから移住した人の数は、家族を含めると8万人に達したようである。(http:en.wikipedia.org)

 

このように見てくると、大局的には、TPP協定の効果として、物流、金融、人材交流のパイプはより太いものとなることで、経済活性化への期待は大きい。よって、そうした局面への舵取りをして行くのが本流となるのは間違いなさそうである。

 

然しながら、これは、必ずしも楽観論を支持するものではない。農業、金融、医療、法律といった分野では、圧倒的な力を持つアメリカの日本市場への流入を考えると、事態を悲観的に捉える立場を理解できなくもない。事実、先に事例として参照したNAFTAでは、アメリカの一人勝ちと分析する専門家もいるようだ。より長期的視野に立った戦略が求められる所以である。

 

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