永野・森田米国公認会計士事務所では、日米会計、経理、簿記、監査、税務、など日系企業の
米国進出ならびに米国での事業拡大に貢献してきた米国公認会計士事務所です。

JAPANESE / ENGLISH

採用情報 / お問合せ

トップページ > ニュース一覧

パートナーシップの会計と税務の基礎(その2) 2015/11/04

会計税務情報2015年11月号

永野森田会計士事務所

 

パートナーシップの会計と税務の基礎(その2)

 

最近アメリカのパートナーシップへの投資が増えつつあるようだ。その背景にあるのは、アメリカと日本を自由に往来するこのできる通行手形―Green Cardの入手、不動産や農業のハイリターン期待、各種資源確保やハイテク技術取得といった動機が働いているように思われる。投資活動が活発化する中で、その独特の会計方法についての理解が求められる所以である。本稿では、三回に分けてその基本的な枠組みについて考察する。今回は、パートナーシップを難解ならしめる元凶の一つである複数の簿記の存在に注目したい。

 

1、会計帳簿は一つではない

 

二重帳簿といえば、殆どの場合、悪徳を意味している。信用を得たい時は銀行用、税金を払いたくないので税務署用といった使い分けを企図しているからである。ところが、パートナーシップではその独特の性格が故に、2つどころか3つの帳簿を備えなければならないとされている。まずは、GAAPに基づく会計帳簿、二つ目が所得税、法人税等を基礎とした税法(Tax)に基づく会計帳簿、そして最後が、これも税務会計の一種ではあるが、IRC 704(b)並びに関連財務諸表規則で求められている会計帳簿である。

 

ここで一つ整理しておくと、パートナシップ関係書類で頻繁に使われているBookという言葉は、大抵の場合、最後に挙げた704(b)を指していると思って良い。Bookと言う代わりに丁寧に704(b)Bookと表現している場合もあるが、単にBook と言った場合GAAPを基礎とした会計帳簿と取り違えて混乱することがあるので、注意が必要である。

 

以上は、パートナーシップの方の会計帳簿であって、パートナー自身の出資(Outside Basis)記録用としても独自に会計帳簿を持つので、これを入れると3+パートナー数の合計だけの会計帳簿が存在することになる。

 

2、GAAP- Tax-704(b)比較

 

パートナー自身の出資記録については混乱はないと思われるので、説明は割愛し、パートナーシップの会計に話しを戻そう。3点セットの帳簿は何故必要なのだろうか。簡単に言えば、GAAPに基づく会計帳簿は財務諸表作成が目的であり、Taxは課税所得算出が目的である。そして、704(b)bookは、パートナーが夫々に保有するキャピタルアカウントの統制の為に必要であるとされる。それは、パートナーシップの清算時に担税上公平に富を配給する為である。夫々の目的が異なることに伴う最も大きな違いは、GAAPとTaxが資産の基礎を取得価格に置くのに対し、704(b)は時価を用いる点にある。勿論、何れの会計方法においても複式簿記の基本であるAssets = Liabilities +Equityの等式から逸脱することはない。

 

3、パートナシップ組成直後のバランスシート(BS)比較

 

以上を、パートナーAとBがそれぞれ、10万ドル、C が取得価格5万ドルで時価10万ドルの不動産(建物)を拠出して組成したABC Partnershipに当てはめることで、その差異を確認する。

 

GAAP とTaxでは共通して資産の基礎を取得価格とすることになっているので、パートナーシップ組成直後のBSは、何れも資産が現金20万ドル、不動産5万ドルの合計25万ドル、パートナーキャピタルが同じく25万ドルとなる。これに対し、時価を反映する704(b)では資産が現金20万ドル、不動産が10万ドルの合計30万ドルになる。次に償却が始まると、3社が別々の償却計算をすことになり、その後のBSは三者三様となる。つまり、GAAPでは経済耐用年数と妥当な償却方法を用い、Taxでは法定償却方法、そして704(b)ではTaxで計算した償却額に資産の時価と取得価格の差異(含み益)を比例調整して得た償却費を反映することになる。

 

例:取得価格$400、時価$1,000の償却資産

  GAAP: 耐用年数10年の定額法   → 年間償却費    $ 40

  Tax: 耐用年数5年の200% 定率法 → 年間償却費 $160

    704(b):耐用年数5年の200% 定率法→ 年間償却費 $400

 

4、パートナーに変動が生じたときのBS比較

 

別の例を用いて会計方法の違いがもたらす差異を検証する。パートナーA、B、Cが夫々10万ドルを拠出してXYZパートナシップを組成し、内10万ドルで不動産を購入したとする。この時点では、GAAP, Tax, 704(b)の何れの方法でもBSは、資産、負債+正味資産共に30万ドルで同じになる。

 

それでは、XYZパートナシップが購入した不動産が13万ドルに値上がりした時点で、XYZパートナシップがAから持分を$110,000で買い取ったらどうなるか。

 

GAAP:    資産$190,000(現金90,000+不動産100,000)

(原価法) 純資産$190,000(A:95,000+B:95,000)

 

Tax(754 Election): 資産$200,000(現金90,000+不動産110,000)

       純資産$200,000 (A:100,000 + B:100,000)

 

704(b):   資産$220,000(現金90,000+不動産130,000)

          純資産$220,000(A:110,000+B:110,000)

 

因みに、GAAPには前出の原価法以外にも幾つかの選択肢があり、ケースバイケースで どの方法論を採用しているかを見極めなければならない。

*******************

< パートナーシップの会計と税務の基礎 | パートナーシップの会計と税務の基礎(その3) >