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病欠有給休暇に関するカリフォルニア州労働法 2015/07/04

会計税務情報2015年7月号

永野森田会計士事務所

 

病欠有給休暇に関するカリフォルニア州労働法

HEALTHY WORKPLACES / HEALTHY FAMILY ACT OF 2014

 

米国カリフォルニア州での新しい労働法が、2015年1月1日付けで施行になった。今回の法改正によりフルタイムの従業員だけではなく、パートやテンポラリー従業員にも最低限の病欠有給休暇を与えることが義務づけられた。今月号はこのカリフォルニア州の新しい労働法について概説する。

 

1.概要

 

雇用主は、今回の法律を従業員に告知し、ポスターを掲示する義務がある。そのポスターの内容は以下のようなものとなっている。

 

病欠有休の資格に関して

 

  • 2015年7月1日以降、雇用初日から数えて1年のうち30日以上カリフォルニア州で就業している従業員には病欠有給休暇 (「病欠有休」)を与えなければならない。

 

  • 病欠有休は30時間の勤務に対し最低1時間の割合で発生し、有給使用時の賃金支払い額は、支払い時の時給で計算する。病欠有休を積み立て始めるのは、雇用初日又は2015年7月1日のいずれか遅い方である。

 

  • 未使用の病欠有休は、最高で48時間(6日間)翌年に持ち越すことが許される。しかし、すでに雇用主が24時間又はそれ以上の何らかの有給休暇制度を取り入れており、毎年の初めに1年間の有給休暇が与えられている場合は、30時間毎に1時間という積み立てをしていく必要はなく、翌年への持ち越しもしなくてよい。

 

使用に関して

 

  • 従業員は、雇用されて90日目から積み立てた病欠有休を使うことができる。

 

  • 雇用主は、従業員からの口頭又は文書でのリクエストがあれば病欠休暇を与えなければならない。本人又は家族の疾病、疾病予防、家庭内暴力やストーキングに関する療養などの理由で病欠有休を使うことができる。

 

  • 雇用主は、1年間に病欠有休を取る時間を24時間(3日間)に制限することができる。

 

病欠有休のリクエスト、使用に対して、従業員に報復や差別をすることは禁じられている。報復・差別を受けた場合、雇用主に関する不服をLabor Commissioner へ申し立てることができる。

 

詳しくは雇用主、又はLabor Commissioner office に問い合わせること。http://www.dir.ca.gov/dlse/DistrictOffices.htm でLabor Commissioner officeの検索ができる。Labor Commissionerのスタッフが電話で個別に対応をする。

 

 

2.解釈と例

 

積み立て・繰越・使用

積み立てと繰越が許されている時間数より、実際に使用できる時間数(1年に最低24時間)のほうが少ないのはなぜだろうか、という問いに、州政府は、それぞれ別個のコンセプトからきているからだと答えている。すでに何らかの形で病欠を含んだ有給休暇制度が存在していても、この積み立て・繰越・使用という3項目は別途、最低限を満たしていなければならない。

 

 

積み立て・使用のタイミング

30日の雇用日数を数え始めるのは雇用初日又は2015年1月1日の遅い方で、実際に病欠有休を積み立て・使用できるのは7月1日からとなる。しかし、90日のプロベーション期間の終了前には使用できない。

 

例1:Aさんは2015年5月15日に雇用され、カリフォルニア州で働いている。7月1日時点で労働日数が30日を越していた。7月1日から病欠有休の積み立てが可能になるが、プロベーション期間の90日を過ぎないと使用はできない。

 

例2:Bさんは2015年7月1日の時点で雇用30日、プロベーション期間の90日をクリアーしていた。2015年8月1日に退職し、2016年5月1日に同じ雇用主に再雇用された。12ヶ月以内に復帰した場合は、退職した時点での資格を受け継ぐことができるので、Bさんは復帰時点で2015年8月1日の退職時点での資格・積み立てを取り戻すことができる。

 

病欠有休時間の数え方

州政府のいう3日間とは、8時間労働をベースにしている。1日に8時間以下働いているパート従業員の「3日間有休」とはどのように計算するか。

 

例3:Cさんは、1日に6時間働くパート社員である。24時間の病欠有休を積み立てた後、3日の病欠休暇をとった。Cさんにとっては1日は6時間の計算で、3日間×6時間=18時間の病欠有休を取ったとみなし、18時間分の有給となる。病欠有休の残日数は6時間となる。

 

例4:Dさんは1日に10時間働くパート社員である。病欠で一日中職場を離れる場合、何時間分の給与を払ってもらうかはDさんがリクエストすることができる。10時間のうち2時間病欠で職場を離れて残りの8時間は職場に戻るといったことも、Dさんはリクエストすることができる。しかし、雇用主は、病欠有休を使用するときは最低2時間からと定めることが許されている。

 

ペナルテイー

従業員の病欠有休使用を拒否したり、不当な処置をした場合、ペナルテイーが課せられる。今回の法律では、加えて、従業員への告知義務を怠った場合のペナルテイーも定められている。

 

例5:Fさんは、時給$12.50で1日に8時間働いているので日給$100 である。積み立ててきた3日間の病欠の使用を申し出たが、雇用主が拒否した場合、$900 のペナルテイーをFさんに支払わなければならない。計算方法は、3日間にあたる給与分の3倍である。

3日× $100 ×3倍 = $900

 

3.病欠有休ポリシー

 

主に次の2つの選択がある。

 

積み立て型:給与日毎に、就業時間30時間毎に対して最低1時間の割合で病欠有休を積み立て、使用した時間を削除していき、残日数を割りだす。この場合、記録・管理が複雑になる。

 

アドバンス型:雇用開始時又は年度の初めに最低24時間(3日分)の病欠有休を与えてしまう。この場合、翌年度への繰越は義務付けられていない。記録・管理が幾分楽だが、病欠有休を年の早いうちに使用して退職する従業員がでてくる可能性はある。

 

その他にも病欠制限時間無しのポリシーなどもあるが、どのポリシーを選択しても積み立て・使用・残日数の記録をつけることは義務付けられる。

 

4.雇用主の義務

 

雇用主の主な義務は次の通り:

 

  • 従業員に同法の内容とどのような病欠有休ポリシーを導入するのかを告知し、ポスターを掲示する。

 

  • 給料日に、病欠有休の使用分・残日分をまとめた詳細(管理表など)を各従業員に渡すか、Paystubに記載する。いずれにしても明細表の管理は必要になってくる。

 

  • 従業員から使用分・残日分の問い合わせがあれば、迅速に提示する。

 

  • 従業員の退職時に病欠有休の未消化時間を買い取る必要はない。

 

  • 勤務時間・病欠有休の記録は最低3年間保管する。

 

5.まとめ

 

今回の法律は、病気をしても休みにくかったパート労働者にとっては朗報である。雇用主には、法令に則り、従業員及び家族の健康に配慮したポリシーの作成・遂行が求められている。一方、ポリシーによっては、合理性や平等性を欠くような事態の発生も予想される。さらに、今回の法律が、適用除外になるケースもあるので、詳細は人事・労務の専門家に相談されることをお勧めする。まだ、日の浅い法律であり、すでに修正案もでているため、今後の州政府の動きに注目したい。

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