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新しい収益認識基準の公表(理論編) 2014/09/04

会計税務情報2014年9月号
永野森田会計士事務所

新しい収益認識基準の公表(理論編)

去る5月28日、FASB(米国財務会計基準審議会)とIASB(国際会計基準審議会)のジョイント∙プロジェクトとして足かけ10年以上に渡り作業が進められてきた収益認識基準がようやく公表された。正式名である「顧客との契約から生じる収益」(Revenue from Contracts with Customers)は、収益の認識に関して初めての包括的な会計基準となる。今月号は、この新しい基準について、現行基準との比較をするとともに、一見わかりにくい新しい収益認識の5つのステップについて概説する。なお、当テーマの背景と理念については2011年12月号を、個別論点については2013年7月号をご参照いただきたい。

1. 従来の収益認識基準

収益の認識に関する概念規定のようなものは、1980年代のConceptual Framework(SFAC No. 5、No.6)で提示されていた。しかし、概念規定のため実務での適用にはあまり適さず、一般に収益認識の規程として機能してきたのは、SEC(証券取引委員会)が1999年にそのスタッフ用に出した通達SAB(Staff Accounting Bulletin) 101(2003年にSAB 104で改変)である。そこには、収益を認識できる場合として、以下の要件が規定されている。

1) 説得力ある取決めが存在すること
2) 物品の引渡し、または役務の提供が完了していること
3) 売価が確定している、または決定可能であること
4) 回収可能性が相当あると見込めること

これらは、ソフトウェアの収益認識基準として1997年にAICPAがSOP(Statement of Position)97-2で提示していたものをSECが抜き出して、一般の収益基準として提示したものである。それは、SECのスタッフが日本でいう有価証券報告等をチェックする際の指針のようなものに過ぎなかった。通常の会計基準のようにFASB等での検討過程を経ていないものである。このため、due processを欠くとしてその正統性も一部では問題になっていた。また、引渡し(delivery)の定義に関しては、SAB 101では title、riskとrewards of ownership の移転とあり、「Risks and Rewards モデル」とも言われてきた。しかし、現行のUS GAAPは分野別、産業別に過去から個別的に積み上げられてきた規程が他にも数多く存在する。1997年のConceptual Frame work以前のものまで含めると一説には200以上の個別規程が存在するといわれ、その中には矛盾した規程も散見される状態であり、問題視されてきた。

2. 新基準のフレームワーク

新基準では、そのような混乱した状態のUS GAAPを「顧客への約束された財又は役務の移転を描写するように、その財又は役務と交換に企業が権利を得ると見込まれる対価を反映する金額により、収益を認識する」(収益認識のコア原則)という統一した概念の下でまとめた。具体的には、顧客との契約を中心にそれに関係する概念で構築されている。そして、収益は、以前にも紹介した以下の5つのステップ(但し、ドラフトからは微妙に表現が変わっている。) で収益を認識する。

1) 顧客との契約を識別する
2) 契約における履行義務を識別する
3) 取引価格を算定する
4) 当該取引価格を履行義務に配分する
5) 企業がそれぞれの履行義務を充足した時に (又は充足するにつれ)収益を認識する

3. 5つのステップ

上記の5つのステップの具体的内容は以下のようなものである。

1) 顧客との契約 - 契約は、「強制可能な権利と義務を生じる複数当事者間の合意」とあり一見したところ通常の感覚からはかけ離れてはいない。ただ、注意を要するのは、今までの「基準」で別項目であった回収可能性が、契約の存在の有無という形で組み込まれていることである。すなわち、回収可能性が probableでない場合は、契約は存在しないとしている。

2) 履行義務を識別 - 次に契約の履行義務(performance obligation)を識別(identify)する。この段階では、履行義務が別個のもの(distinct)かどうかを判断することになる。背景にあるのは、2000年頃からEITF(Emerging Issue Task Force) 00-21等で議論されてきた複数成果物を伴う契約に関する収益認識の議論である。単純な一回限りの物品販売契約なら契約の履行義務は単一である場合が多いと思われるが、そうではない場合はdistinctか否かに基づいて分解する必要がある。新基準は、その判断基準を示しているが、どこまで分解すべきか実務では容易に判断できない場合もかなりあると思われる。

3) 取引価格を算定 - 取引価格については固定されている場合は、それほど問題ではないが、実際は値引き、リベート、返金、業績ボーナス等で変動する場合が多い。このような変動対価(variable consideration)に関して、新基準はa) 対価の見積もり、及びb) 収益に関する制限(constraint)の2つを考慮して取引価格を決めるとしている。対価の見積もりに関しては、期待値又は最も可能性が高い値を用いる。そしてその対価の見積もりを踏まえて、収益に重要な戻し入れが発生しない可能性が高い(probable)と見込まれる制限(constraint)内で取引価格を決定する。Constraint はわかりにくい概念だが、基準では、取引価格のconstraint として、対価が市場の変動や天候等の影響を受けやすい場合、対価の不確実性が長い間解消しないと見込まれる場合、広範囲の請求額の切り下げ等をしている実態がある場合等を例示している。なお、このように乱暴にいえば、もらえそうな金額を対価とすると構成をしたことで、今までの「基準」の「確定している(fixed)、または決定可能(determinable)」といった原則を事実上放棄していることに留意したい。

4) 履行義務に配分 - 複数の履行義務がある場合はその履行義務ごとに価格を配分する必要がある。このためには、按分基準が必要になる。現行の会計基準でこの按分基準に主に利用されるのは、販売価格に関する売手特有の客観的な証拠(VSOE-Vendor Specific Objective Evidence)である。新基準では、VSOEに代えて単独での販売価格(Stand-alone Selling Price) という概念を導入している。単独での販売価格は、それがあれば観察可能(observable)な価格としてそれを使い、ない場合は、単独での販売価格を市場評価額調整アプローチ、コスト・プラス・マージンアプローチ、場合によっては残余価格アプローチで見積もるとしている。但し、実質的には、新基準でも基本的には販売価格が按分基準として利用されているためそれほど差は出ないのではないかといわれている。なお、現行のソフトウェアの収益認識基準は、販売価格ではなく公正価値(fair value)を按分基準に指定している。ソフトウェアの収益認識基準も、販売価格を利用することになり、この点では収益の認識がより容易になる(早期認識できる)といわれている。

5) -1履行義務を充足 - この点に関しては支配(control)という概念が用いられている。約束された財及び役務をまとめて資産(asset)として、資産のcontrolとは、その利用を指示し、その便益のほとんどすべてを獲得する能力と定義されている。そして顧客がcontrolを獲得したときに資産の移転が起こり、履行義務が充足されるとする。Control概念を基礎にして履行義務の充足を判断していることから従来のRisks and Rewards モデルと対比して新基準はControl Based モデルともいわれる。

5)-2充足した時 - また、履行義務は徐々に(over time)充足される場合と、一時期(at a point in time)に充足される場合に区別される(2011年12月号参照)。新基準では以前のドラフトを少し変更した形で、一定の要件を満たした場合は徐々に充足される場合であるとし、それ以外については一時期に充足されるとしている。そして、徐々に充足される場合とは、a) 顧客が企業の履行に応じて、履行の便益を同時に受け取り、そして消費する場合、 b)  企業の履行が、顧客が支配している状態で資産を創造またはその価値を高める場合、c) 企業の履行が、その企業にとって代替的使用が可能な資産を創出せず、かつ 企業が、現時点までの履行に対する支払いを受ける権利を有している場合、のどれか一つを満たす場合であるとする。2011年12月号でも触れたが、この徐々に充足される場合の条件に最も影響を受けるのは長期請負工事であると思われる。この点に関して、新基準の審議過程では、今までのような工事の進捗度と工事費用、工事収益に基づいた工事進行基準は適用できず、契約書上、中途でキャンセル等があったとき代金を回収に関してどのように取り決めているかに依存するという議論があった。つまり、工事進行基準のような完成・引渡前の収益認識を新基準の下でもおこなうためには契約書の段階でそれに合わせた取り決めが必要となる。

4. その他の事項

新収益認識基準の基本的な枠組みを概観したが、今回の新基準の規程は多岐に渡る。契約資産や契約負債の概念、契約の結合や契約の変更、製品サービス保証、ライセンス、顧客が追加で財貨やサービスを受けるオプション、顧客の返品権、販売当事者(principal)又は代理人(agent)の判断基準、ギフトカード等に関わる顧客の未行使の権利、契約コスト等に関して詳細な説明がなされている。また、注記事項に関しても、従来よりも多くの事項が求められる。これらの点については、来月以降で具体的に説明したい。

5. 適用時期

新しい収益認識基準ASU2014-09の適用時期 は、以下のとおりである。Public Companyに関しては、2016年12月15日より後に開始する会計年度より適用され、その年度の期中期間に関しても適用される。このため暦年決算会社については、2017年の第一四半期から適用が始まることになる。なお、早期適用は認められていない。Non-public Companyに関しては、 2017年12月15日より後に開始する会計年度より適用され、期中期間については、2018年12月15日より後に始まる会計年度について適用される。このため暦年決算会社については2018年12月期が初めての適用になり、その後2019年の第一四半期から期中期間についても適用されることになる。Non-public Companyに関しては、Public Companyと同じタイミングまでの早期適用が認められている。 

【参考リンク先】
FASB公表 Revenue from Contracts and Customers
http://www.fasb.org/cs/ContentServer?c=Document_C&pagename=FASB%2FDocument_C%2FDocumentPage&cid=1176164076069

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