永野・森田米国公認会計士事務所では、日米会計、経理、簿記、監査、税務、など日系企業の
米国進出ならびに米国での事業拡大に貢献してきた米国公認会計士事務所です。

JAPANESE / ENGLISH

採用情報 / お問合せ

トップページ > ニュース一覧

メキシコ進出の法人形態について 2014/07/04

会計税務情報2014年7月号
永野森田会計士事務所

 

メキシコ進出の法人形態について

 

今、メキシコへの熱い視線が注がれている。自動車産業を中心として日系企業のメキシコ進出は増加の一途を辿っている。10年前までは日系企業は約300社程度しかなかったものの、今や倍の600社程度までなっている。アメリカの南隣に位置しており、とかく麻薬やマフィアなどのマイナスイメージの付きまとうことの方が多かったメキシコだが、今まさに「進出ブーム」が沸き起こっている。今月号は、メキシコ進出の法人形態ならびにアメリカ法人から直接メキシコ法人を設立する方法のメリットについて、概記したいと考える。

 

1. 自動車産業が集まる「バヒオ地域」

 

首都メキシコ・シティと第二の都市グアダラハラ、この中間の地域を「バヒオ(Bajio)」と現地人は呼ぶ。Bajioとは「盆地」を意味する。この直径300キロ範囲の広大な盆地において、日産自動車、本田技研、マツダなど自動車組立工場そしてその関連企業が続々と進出している。すべてここ2~3年の話である。大都市のメキシコ・シティーやグアダラハラへは、いずれも車で4時間程度はかかる謂わば田舎であった。しかしここに近年日本人の駐在員が急激に増えている。日系向けのホテルやレストランの供給は追いつかない状態で駐在員が家族も呼び寄せられるよう日本人学校も急遽、設立準備にある。

 

日系企業のメキシコ進出理由は、安い労働力の確保だけではない。アメリカやカナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)があること、北米と南米のいずれにも近いという有利な立地条件、また今後成長するであろうメキシコの市場に直接参入できるというメリットがある。アメリカの3大自動車メーカー(GM、Chrysler, Ford)のほか、ドイツのVolkswagenもすでにこのバヒオに集まっている。そのためメキシコでの自動車生産台数は急激に増えており(2012年は約300万台)ブラジルやインドの水準に接近している。



2.メキシコ進出に関連の2つの法律

 

まずメキシコに現地法人を設立する際には、以下の2つの法律に留意する必要がある。

 

A.外資法

業種によって外資を制限する法律である。例えば、石油産業など国策に触れる外資の参入は禁止されている。したがって、どの業種に属するかを注意すべきである。ちなみに自動車製造関係は100%外資でも許可されている。またメキシコの一般法人と異なり、外国資本の参加する法人については外資法に従い「外資委員会」への登録が必要である。

 

B.会社法

日本やアメリカでの会社法にあたる。メキシコでは個人事業を行う場合は「移民法」の適用を受けるが、通常の法人事業を行う場合については大幅に緩和されている。したがって法人は移民法について心配する必要はない。メキシコの会社法に準じてビジネスを展開する際に一般的に採用される形態は「株式会社(S.A.)」および「合同会社(S. de R.L.)」(米国のLLCに類似するもの)の二種類である。日本から投資する場合は一般的に株式会社(S.A.)が好まれる傾向があるが、アメリカ法人を経由してメキシコ現地法人を設立する際、この合同会社(S.de R.L.)を選択するケースも見られる(その理由はあとで説明)。

メキシコ法人(株式会社、合同会社)は、さらに資本金を無制限に変動できる「固定型」と「可変型」にそれぞれ分けられる。しかし、近年は「固定型」でも手続きをとれば資本金は変動できるため、実質的にはあまり意味のない区分(固定型、可変型)とも言われている。



3.メキシコの株式会社と合同会社の違い

 

メキシコの株式会社(S.A.)と合同会社(S.de R.L.)の違いは以下のように簡単にまとめられる。

 

 

株式会社(S.A.)

合同会社(S.de R.L.)

資本金

1ペソから可(2012年より。ただし商習慣として従来の50,000ペソ(約US$4,000)が現在も存続。

1ペソから可(2012年より。ただし商慣習として従来の3,000ペソ(約US$250)が現在でも存続。

株主数(株式会社の場合)

最低2名必要。個人でも法人でも可。※

------

社員数(合同会社の場合)

------

最低2名必要。個人でも法人でも可。※

経営機関

会社は3名(議長、秘書役、財務役)以上で編成される「取締役会」、または1名の「独り取締役」により運営される。

取締役会を構成、あるいは1人にその機能を任せることも可能。

その他

実際の執行役員としては、社長、CFO、CEOが任命され、会社代表者を担う。「監督機関」として1名以上の「監査役」が任命される。

監督機関としての「監査人」の任命は任意。

※2013年に施行された「反マネーロンダリング法」により、外国籍の株主はメキシコ当局へ報告義務あり。



4.アメリカ法人からメキシコ法人を設立する方法

 

メキシコ法人を設立する場合、2つの方法が考えられる。一つは直接日本本社から投資する方法である。もう一つが、アメリカ現地法人によりメキシコ法人を設立するという方法である。アメリカ現地法人経由でメキシコ法人を設立するメリットとしては(1)メキシコ法人設立にかかる費用及び期間を大幅に短縮できる、(2)アメリカ法人の節税対策のために用いることができる(ただしメキシコ合同会社の場合のみ)。

 

(1)メキシコ法人は、その手続きにおける形式が重視される。例えば長くて細かい定款を求められる。またその投資会社(親会社)の定款書類の提出も求められる。当然、すべてスペイン語でなければならない。その点、日本から直接メキシコに投資する場合、親会社の定款(日本語)をスペイン語に翻訳した上、駐日メキシコ大使館の公証人の認可を経て、メキシコの経済省に提出しなければならない。一方、アメリカ法人の資本によるメキシコ法人を設立する場合、定款などは英語からスペイン語の翻訳は比較的スムーズに行われ、また大使館を経なくても簡単に提出できるルートができている。そのため、日本本社から設立する場合の6ヶ月に比べ、アメリカ法人から設立する場合は1ヶ月程度と、大幅に期間は短縮されると言われている。

 

(2)メキシコ法人は、合同会社の場合に限り、アメリカ連邦税のおけるパートナーシップとして取り扱うことができる選択肢が与えられている。つまり、アメリカ連邦税法におけるLLCに準ずる取り扱いを受け、そこでメキシコ合同会社の損益をパススルーとしてすべてアメリカの親会社が吸い上げることが可能となる(Reg. 301.7701-2(b)(8))。したがって、特にメキシコ合同会社が赤字体質の場合、アメリカ親会社にとっては有効な節税手段として利用できる。



5.まとめ

 

メキシコ進出のブームは当面続くと考えられる。アメリカと比較して、メキシコ法人の登記手続きは形式を重視し、提出書類も多く期間も長いとされる。その上すべてスペイン語に翻訳する必要がある。そのため、メキシコ進出を決断する際、どのような法人形態で進出し、またアメリカ法人との関係でどのような設立手段を取るのか、それぞれのオプションを併せて考えるべきである。

***********

< 総合商社、国際会計基準(IFRS)を任意適用へ | FATCA税制とW-8BEN様式変更について >