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総合商社、国際会計基準(IFRS)を任意適用へ 2014/06/04

会計税務情報2014年6月号

永野森田会計士事務所

 

総合商社、国際会計基準(IFRS)を任意適用へ

 

日本の総合商社は、相次ぎIFRSの任意適用を実施している。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅は2014年3月期決算よりIFRSに変更した。住友商事もすでに他社に先駆けて2011年3月期決算よりIFRSを導入済みである。これら総合商社は、もともと米国会計基準を使用していた。従って、米国基準から国際会計基準への変更となる。今月は、こうした日本国内におけるIFRS任意適用の動向や課題について概観する。

 

1. IFRS導入の現状

 

世間の注目を浴びてきた「国際的に通用する夢の会計基準」ことIFRS(International Financial Reporting Standards)であるが、その強制適用の時期については、未だ不明である。日本の金融庁は、2016年にも公開企業にIFRSを強制適用する方向で進めてきた。しかし世論からの慎重論もあり、最近はその期限を見送る方針へと変えている。米国でもIFRSの強制適用の話題はもはや出なくなりつつあり、代わりに米国会計基準(USGAAP)の適用を継続しつつ、IFRSの策定にも関与する形での「コンバージェンス」への方向転換が行われている(ニュースレター2013年5月号参照)。こうした状況下、日本の大手総合商社はグローバルに事業を展開しており、海外での資金調達をより円滑に行う観点から、他産業に先駆けてIFRSの「任意」導入を選択実施している。

 

またIFRSの任意適用を進めているのは何も総合商社だけではない。IFRSの任意適用を正式に公表した日本企業は、以下の24社となっている。昨年暮れに三菱商事が任意適用を表明したことで、大手総合商社は、日本基準の豊田通商を除き、全て国際会計基準を適用することになる。

 

1)     三井物産

2)     住友商事

3)      伊藤忠商事

4)      丸紅

5)      双日

6)      三菱商事

7)      日本電波工業

8)      HOYA

9)      日本板硝子

10)     日本たばこ産業

11)     ディー・エヌ・エー

12)     SBIホールディングス

13)     アンリツ

14)     中外製薬

15)     楽天

16)     ソフトバンク

17)     旭硝子

18)     マネックスグループ

19)     トーセイ

20)     アステラス製薬

21)     武田薬品工業

22)     小野薬品工業

23)     ネクソン

24)     LIXILグループ

 

上記のほか、日本取引所グループや電通などが国際会計基準任意適用の意向を表明している。

 

2. IFRS導入にあたっての課題

 

すでにIFRSに変更した総合商社からは、次のような財務諸表への影響が見られると指摘されている。

 

  1. 売上収益認識の違いから売上高の減少

  2. 固定資産減損処理の相違の影響等で利益が減る

  3. 債権の減損処理導入の影響で利益が減る

 

一方、IFRS移行の場合はより実務的な課題が存在する。IFRSでは、連結上の決算期を原則すべて同じ期末に揃えなければいけないと規定する。日本基準や米国基準では、親会社と子会社との財務諸表の連結は、3ヶ月内の期末の違いでも許される。しかしIFRSではそれが許されないのである。そのため、連結範囲内の子会社の決算期を、すべて親会社の期末に修正しなければならないのである。すなわち世界中の子会社の決算期を、すべて親会社3月末に統一する作業がでてくる。グローバルに子会社・関連会社を何百社単位で展開している大手総合商社にとってはこれは容易なことではない。米国を含めて世界中に散らばる総合商社の子会社・関連会社は決算期を変更するために大変な作業を行っている。

 

3. 日本版国際会計基準は遠のく?

 

「日本版」IFRS(J-IFRS)も検討されているという興味深い話もある。日本の会計基準設定団体である企業会計基準委員会(ASBJ)では、「エンドースメントされたIFRS(IFRSの個別基準の選択採用)」の実現可能性について、昨年来頻繁に議論している。これは、IFRSそのもの(ピュアIFRS)を一部を削除・変更し、導入しやすいIFRSを作ろうというものである。より具体的には、日本基準にIFRSを取り込んでいくことにより、国際的にIFRSと同等の基準を作ろうという戦略的な考えである。こうしたことから、金融庁は、2013年6月に公表した報告書でIFRS任意適用促進策の一つとして示している。

 

しかし、現実的にはこの議論も迷走を深めている。上記総合商社などが実際にIFRSを任意適用するようになり、「日本版」IFRSの存在意義に疑問が生じている。日本基準ならびにIFRSからも中途半端に見られるのではないかと指摘される。このようにJ-IFRSの議論は、開始わずか半年でかなりトーンダウンした感が否めないのである。

 

4. まとめ

 

日米でもIFRSの強制適用のスケジュールが見えないが、国際的に活躍する日本企業は次々に自主的にIFRSを導入している。こうした傾向は今後も継続すると見られる。またIFRSの考えのもと、連結対象の海外子会社の決算期を、親会社の決算期と同一期末に直すという動きも今後加速すると見られる。

 

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